外食産業では、長年続く人手不足が事業の成長を左右する課題になっています。アルバイト採用が思うように進まない、採用をしてもすぐにやめてしまう、日本人社員の採用単価が上がり続けているし、募集をしてもなかなか応募がない、既存スタッフの負担が大きくなっている──こうした悩みは、多くの飲食店が共通して抱えているものだと思います。
その一方で、最近では外国人材の採用に目を向ける企業が増えています。とりわけ「特定技能制度」は、飲食・外食企業が即戦力として採用できる実務的な仕組みとしてとても注目されています。しかし実際には、制度の内容を正確に理解している企業や担当者はまだまだ多くないのが実情です。
このブログでは、外食業に特化した形で、特定技能制度の仕組みと活用方法、さらに将来的な「特定技能2号」へのキャリアパスまでをわかりやすく説明します。
特定技能とは、日本の特定産業で人手不足を補うために設けられた在留資格で、外食分野では、調理、接客、店舗運営補助など、店舗の中心業務に携わることが認められています。
それまで、外食業では、「技能(コック)」の在留資格が正社員として店舗で働くことが認められていましたが、それ以外で店舗において調理、接客などの業務を行う外国人は殆どが「留学」や「家族滞在」などで資格外活動を許可されたアルバイト社員でした。
「特定技能」の最も大きな特徴は、「実務に就ける在留資格であり、戦力として店舗の現場で働ける」、「必要な技術・知識は試験で確認されるため、一定レベルの業務を行う能力が期待できる」という点です。つまり、アルバイト社員をゼロから育成するのとは異なり、受け入れる段階で最低限の業種における知識やスキルと日本語力を備えているということです。
外食企業が特定技能の活用を検討する際、よく挙がるのは次のようなポイントです。
特定技能1号は最長5年間働くことができます。アルバイトの短期離脱とは違い、正社員として育成できるため、店舗の戦力が安定します。また、特定技能2号の在留資格を取得してもらうことによって、5年を超えて雇用をしていくことも可能です。
外食分野の基準に合う業務(調理、衛生管理、接客、シフト管理補助など)であれば、幅広く担当してもらうことが可能です。特に、複数店舗を持つ企業では、店長・副店長候補として育てているケースも増えています。
近年は求人広告費が高騰していたり、募集をかけても従業員が集まりにくい状況にありますが、特定技能の場合は定着率も高く、投資回収しやすいのと思われます。
飲食店が特定技能外国人を採用する際の一般的な流れは次のようになります。
外食分野の基準に沿った業務であるかを確認します。
海外の送り出し機関、国内の特定技能向け求人、技能実習からの移行など、複数のルートがあります。
実技試験や日本語試験に合格しているかを確認します。
特定技能では、生活面の支援や相談体制なども求められるため、契約内容や支援のための計画を整えます。
支援に関しては、外部の登録支援機関がサポートするケースと、自社で支援業務を実施するケースがあります。
外食業においても、令和5年6月の閣議決定により、特定技能2号の対象となりました。現在、多くの企業が次の観点から「長期キャリアを見据えた育成」を進めています。したがって初めて特定技能外国人を受入れる企業側としても、早い段階から育成計画を見据えた体制を整えておくことが重要だと思います。
今まで述べてきた観点から、外食企業が制度を活かすために押さえておくべきポイントは以下のようになります。
● 業務適合性の判断
単なるホールスタッフのみでは申請が難しいことがあります。調理や衛生管理など、店舗運営の要となる業務を含めることで、外食分野として適合しやすくなります。
月額コストは発生しますが、制度に慣れるまでは外部機関を活用する企業が多い傾向にあります。一方、一定規模以上の企業は「自社支援」へ切り替えることでコストを抑えながら安定的に運用できます。
特定技能1号 → 監督者 → 店長候補 →(将来的に2号)
このような働き続けることによる将来像を提示できる企業ほど、優秀な人材が集まり定着します。
人手不足が続く外食業にとって、特定技能制度は単なる採用手段ではなく、店舗の運営力を安定させ、将来の中核人材を育成するための仕組みだと思われます。早めに特定技能制度を活用し、現場での育成制度を整えることが競争力をアップさせることが可能となります。
「うちの会社でも特定技能人材を受け入れて見ようか?」と迷われている場合は、是非お気軽にご相談ください。