2027年の制度開始が予定されている「育成就労制度」では、一定の条件を満たせば、外国人労働者が本人の希望で職場を変える(=転籍)ことができる仕組みが整えられています。これは従来の技能実習制度にはなかった大きな特徴であり、外国人本人のキャリア形成を尊重する仕組みとして注目されています。
ただし、誰でも自由に転籍できるわけではなく、技能水準・日本語力・就業年数・受入企業側の体制など、いくつかの条件をクリアする必要があります。ここでは、制度のポイントをわかりやすくご紹介します。
まず第一に問われるのは、転籍を希望する本人の能力や経験です。一定の技能水準と日本語力を持っていることが求められ、加えて、現在の職場で原則1年以上2年以下の範囲内で在職している必要があります(分野別運用方針で定める期間を超えている必要あり)。
また、育成就労の在留期間が延長などを含めて3年を超えていないことも条件となります。就労計画であらかじめ定められていれば、最短1年で転籍できるケースも想定されています。
受入企業は、採用や教育のための投資を行っていますので、転籍が発生する場合には、転籍先の企業が一定割合の費用を負担するというルールが設けられています。働いた期間が短いほど、転籍先が負担する割合は高くなり、例えば1年6か月未満の場合は5/6、2年を超えると徐々に割合が下がっていき、2年6か月以上勤務していれば1/4となります。
転籍先としてどんな企業でも良いわけではありません。技能育成や日本語指導の実績がある、いわゆる「優良な実務実施者」であることが前提となります。
さらに人数制限も設けられており、転籍者の割合が外国人全体の3分の1を超えないようにする必要があります。地方から都市部の企業へ転籍する場合には、より厳しく6分の1以内という制限がかかります。転籍者ばかりが集まる企業にならないよう、制度としてブレーキがかけられていると言えます。
もう一つ重要なのが、民間ブローカーによる介入は禁止されているという点です。
職業紹介は、ハローワークや監理支援機関など公的枠組みの中で行うことが求められており、過度な紹介料負担や不透明な仲介を防ぐ狙いがあります。
流れとしては、まず現在の職場で1年以上まじめに勤務し、技能や日本語の評価で一定基準をクリアすることがスタートラインとなります。そのうえで、条件を満たす優良企業とのマッチングが成立し、転籍先企業が必要な費用負担を行い、さらに人数枠にも余裕があれば、正式に転籍が認められる形になります。
なお、ここで説明しているのは「本人の希望による転籍」であり、会社の倒産やハラスメントなど、本人に責任のない事情で転籍が必要となる場合には、別のルールが適用されます。
育成就労制度の大きな特徴は、能力を身につけた外国人労働者が、より良い環境を求めてキャリアアップできる道を開いたという点にあると言えます。一方で、企業側の投資や受入体制も守るための仕組みも組み込まれており、転籍が制度趣旨に沿って適正に行われるようバランスが取られています。
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