介護業界では、慢性的な人手不足が長年の課題となっています。高齢化が進む一方で、介護職を希望する日本人は極端に減少傾向にあり、近年介護職員不足と物価高による運営コストのアップによって倒産する介護事業者も急増しています。このような中、現在注目を集めているのが「特定技能制度」による外国人材の活用です。
特定技能制度は、人手不足が深刻な分野に限って、一定の技能と日本語能力を備えた外国人を即戦力として受け入れる仕組みであり、介護分野もその対象なっています。すでに全国で多くの介護施設が特定技能外国人を採用を始めています。
特定技能が介護業界で広がっている最大の理由は、「現場でそのまま働ける人材を確保できる」という点にあります。特定技能の介護分野では、介護技能評価試験と日本語試験の両方に合格した人だけが在留資格を取得できます。
介護の技能評価試験は、学科試験では、「介護の基本」、「こころとからだのしくみ」、「コミュニケーション技術」、「生活支援技術」の4つの分野から出題され、実技試験では、写真やイラストを使い、介護現場での判断力やスキルを問う試験となっています。
また、日本語試験は、日本語の日常的なレベルを見る「日本語能力試験N4」若しくは「国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)」のいづれかの合格と介護現場で必要な日本語(声かけや文書作成など)能力を見る「介護日本語評価試験」の合格が必要となります。
そのため、入社時点で一定の介護知識と日本語でのコミュニケーション能力が備わっており、教育にかかる初期負担を抑えることができます。
特定技能1号外国人として、最長5年間にわたり安定して雇用できる点も事業者にとって大きな魅力ですし、特定技能で在留中に「介護福祉士」の資格を取り、「介護」ビザに在留資格を変更する道もあります。「介護」ビザは在留期限の上限がありませんので、事業所の中核心材として長期にわたり、育成と雇用をしていくことも可能です。
人材が定着すれば、現場の負担軽減だけでなく、サービスの質の向上にもつながっていきます。
特定技能外国人を採用する流れは、初めての事業者様でも理解しやすい仕組みになっています。まずは事業者としての受け入れ要件を満たしているかの確認から始まります。介護保険法に基づく適正な運営がなされていること、適切な報酬を支払えること、外国人を支援する体制が整っていることなどがポイントになります。
次に、人材の確保になりますが、国内在留者の中から探す場合もあれば、海外から招聘するケースもあります。候補者は、前述のように介護分野の評価試験と2つの日本語試験に合格している必要があります。
人材が決まれば、雇用契約を締結し、出入国在留管理庁へ在留資格申請を行います。無事に許可が下りれば、就労開始となります。並行して、住居の確保、生活オリエンテーション、日本での生活支援なども行っていく必要があります。
重要なポイントとして、せっかく縁があって入職した特定技能外国人が、言葉の壁や文化の違い、人間関係の悩みで早期に離職してしまうようにしないことです。実際にはそのようなケースも少なくありません。そのためには現場全体で受け入れる意識を持ち、外国人職員だけに過度な負担をかけるのではなく、わかりやすい日本語で指示を出す、マニュアルを多言語化する、困ったときにすぐ相談できる体制を整えるなど、日々の積み重ねが定着率を大きく左右すると言えます。
また、将来のキャリアを見据えた育成も重要です。介護福祉士資格への挑戦など、長期的な育成プランを示すことで、本人のモチベーションも高まり、結果として事業所の戦力として長く活躍してくれる可能性が高まります。
これまで特定技能は、主に介護施設や通所系サービスでの活用が中心とされてきましたが、最新の運用では、訪問看護についても介護職員初任者研修課程などの修了し、「1年以上の実務経験がある外国人」であれば、特定技能外国人として活用できる道が開かれました。
これにより、訪問看護ステーションにおいても、即戦力となる外国人材の採用が現実的な選択肢となったと言えます。特に在宅医療や地域包括ケアの分野では人材確保がますます困難になっているため、今後は訪問看護の現場でも特定技能人材の活躍が広がっていくと見込まれます。
特定技能制度は、単なる人手不足対策ではありません。外国人材とともに職場を作り上げ、多様な価値観を取り入れながら、持続可能な介護体制を築いていくための「未来への投資」でもあります。
人材確保に悩んでいる事業者こそ、一度、特定技能制度の活用を検討してみてはいかがでしょうか。制度を正しく理解し、適切な支援体制を整えることで、介護現場はまだまだ成長していけるはずです。
特定技能外国人の採用にご興味のある事業者様は、是非ご相談ください。
⇒お問い合わせ