特定技能の賃金「日本人と同等以上」とは

特定技能の賃金「日本人と同等以上」とは

特定技能外国人を雇用する際に求められる「日本人と同等以上の賃金」とは何を基準に判断されるのか。最低賃金では足りない理由と実務上の注意点を解説します。

特定技能外国人の「日本人と同等以上の賃金」とは?最低賃金では足りない理由を説明します

特定技能外国人の雇用を検討する企業から、非常によく聞かれる質問の一つが「最低賃金以上であれば問題ないのではないか」というものです。
しかし、特定技能制度における「日本人と同等以上の賃金」とは、単に法律上の最低賃金をクリアしていれば良いという意味ではありません。この制度が求めているのは、同じ職場で、同じ業務と責任を担う労働者として、不合理な待遇差がないことです。

 

比較の基準は「国籍」ではなく「業務と責任」

 

入管実務において最も重視されるのは、「誰と比べて同等以上なのか」という点です。
この比較対象には明確な優先順位があり、まずは同じ業務内容・同程度の技能や経験を持つ日本人社員がいるかどうかが見られます。もし該当する日本人がいない場合でも、「外国人だから比較対象がいない」という説明は通りません。
その場合は、自社の賃金規程や給与テーブルに当てはめた場合の金額、あるいは最も近い業務を行う日本人社員や近隣同業他社の水準を根拠に、合理的な説明を行う必要があります。

 

基本給だけを見ていると判断を誤る

 

もう一つ、実務上の落とし穴になりやすいのが、「基本給さえ揃えればよい」という考え方です。入管が確認するのは、基本給だけではありません
日本人社員に支給している各種手当、賞与、昇給制度がある場合、それらを外国人だけ除外する合理的理由がなければ、同等以上とは認められません。特に「外国人には賞与を出さない」、「住宅手当は日本人だけ」といった運用は、是正対象になりやすいポイントです。

 

実務経験の評価は想像以上に重視される

 

技能実習2号を修了して特定技能へ移行する場合、すでに3年以上の実務経験を積んだ人材として評価されます。そのため、日本人の新卒社員や未経験者と同じ賃金水準では、「同等以上」とは認められないのが一般的です。
この点を理解せず、「外国人だから最初は低めで」と設定してしまうと、申請段階で説明がつかなくなります。

 

「報酬に関する説明書」は単なる形式書類ではない

 

在留資格申請時に提出する「報酬に関する説明書」は、単なるチェックシートではありません。
ここでは、なぜその賃金額が日本人と同等以上だと言えるのかを、企業が論理的に説明することが求められます。比較対象の選び方、賃金規程の有無、職務内容や責任の程度など、一つでも説明が弱いと、審査が長期化したり、追加資料を求められたりする原因になります。

 

賃金設定は「コスト」ではなく「制度リスク管理」

 

特定技能制度において、賃金設定は単なる人件費の話ではありません。不合理な待遇差は、在留資格不許可や更新不許可、さらには制度違反としての指導・是正につながる可能性があります。

 

「日本人と同等以上の賃金」とは、外国人を特別扱いするためのルールではなく、同じ職場で働く労働者として、対等に扱うための制度上の最低ラインだと理解することが重要です。

 

特定技能外国人を雇用する企業から、「賞与や昇給は必ず支給しなければならないのか」という質問を受けることは少なくありません。最低賃金や基本給については理解していても、賞与や昇給の扱いになると判断に迷うケースが多いようです。
結論から言えば、特定技能制度における「日本人と同等以上の賃金」は、基本給だけを見て判断されるものではありません。企業に賞与や昇給の制度がある場合、その扱い方次第では、意図せず制度違反と評価されてしまう可能性があります。

 

賞与は「出すかどうか」より「制度があるかどうか」

 

まず理解しておくべきなのは、入管が見ているのは「実際に毎年必ず賞与を支給しているか」ではなく、賞与制度そのものが存在しているかどうかという点です。
就業規則や賃金規程に「業績に応じて賞与を支給することがある」、「年2回賞与を支給する」といった記載があり、日本人社員に対して支給実績がある場合、特定技能外国人だけを一律に賞与対象外とすることは原則として認められません。
実務上よく見られるのが、「外国人は契約社員だから賞与なし」、「在留資格が不安定だから支給しない」といった説明ですが、これらは国籍や在留資格を理由とした不合理な差別と判断される可能性が高いです。

 

賞与は同額でなくてもよいが、基準は同じである必要がある

 

ここで誤解されやすい点として、「日本人と同額の賞与を必ず支給しなければならないのか」という疑問があります。
この点については、必ずしも同額である必要はありません。
賞与が勤務成績や評価、勤続年数などに基づいて決まる制度であれば、特定技能外国人にも同じ評価基準を適用すれば足ります。結果として支給額に差が出ること自体は問題ではなく、重要なのは「評価の物差しが同じであるかどうか」です。

 

昇給も同じ考え方が基本

 

昇給についても、考え方は賞与と共通しています。日本人社員に対して定期昇給や評価に基づく昇給制度がある場合、特定技能外国人だけを昇給の対象外とすることは、合理的な理由がなければ問題となります。
一方で、「入社初年度は昇給対象外」、「一定期間の勤務実績を見てから昇給を判断する」といった運用を、日本人・外国人を問わず共通に行っているのであれば、不利な取り扱いとは評価されません。

 

実務で注意すべきポイント

 

実際の申請や更新手続きで問題になりやすいのは、制度と運用のズレです。就業規則や賃金規程上は日本人と同じ扱いになっていても、実態として一度も外国人に賞与や昇給をしていない場合、「形式だけ同等で、実質的には差別があるのではないか」と見られるリスクがあります。
また、「日本語能力が十分でないから」、「外国人だから最初は低く」といった曖昧な理由で昇給や賞与を除外することも、慎重な対応が必要です。

 

入管への説明は「制度」と「実態」の両立が重要

 

在留資格の申請や更新の際には、「報酬に関する説明書」や賃金規程を通じて、賞与・昇給の制度が日本人と同一であることを説明します。そのうえで、評価基準や支給判断の方法を具体的に示すことができれば、審査は比較的安定します。

 

特定技能制度における賃金の考え方は、「外国人だから特別扱いする」ためのものではなく、同じ職場で、同じ責任を担う労働者として、対等に評価しているかどうかが問われています。

 

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